おちゃのじかん
~大人の秘密基地~
【閉店】
〇月×日
子どもの頃、家の前には小高い丘が広がっていた。
そこに、近所の仲間と秘密基地を作った。
作っては潰れ、虫にさされ、時には傷だらけ。
近所の大人に見つかって、怒られたってへっちゃら。
こう見えて(どう見えて!?)昔はガキ大将だった。
何度も何度も作り直した、子どもだけの心躍る隠れ家。
誰にも邪魔されない、密やかなじかん。
いつの間にか大人になり、置き忘れていった遠い日々。
あんなにエキサイティングだった冒険の記憶も、いつしか薄れていった。
でも。
見つけた!!
幼い日の胸の高鳴りを…。
仲間と過ごした密やかな日々を…。
あの日の秘密基地を…。
たどり着いた先は「おちゃのじかん」。
穴山の森のなかに佇む小さな一軒家。
鳥のさえずり、目にまぶしい緑、風薫る昼下がり。
たとえソーシャルディスタンスじゃなくたって、
ここは中庭がいい。
ランチは本日のベジプレート。
ごはんは、赤米、きび、キヌア、はと豆が入った雑穀米。
メインはカリカリ食感がたまらないひよこ豆のコロッケに、野菜とホモスの生春巻き。
ひしお味噌の豆腐やガーリック香るカリフラワーのオイル蒸し、人参と茎わかめのシリシリ炒め、さっぱりとした新玉ねぎと若芽の梅和えなど、どれも自分では作れないようなものばかり。
私の大好きなズッキーニは、タリアテッレのようにスライスされて、爽やかなミント風味に。
そして、この豆とお野菜たっぷりのスープ!!
まろやかな甘みとコクを兼ね備え、カリっとしたクルトンが存在感を放ち、美味の華を添える。
食後のスイーツは店主手作りのケーキを♪
迷わずレモンケーキをオーダー。
甘酸っぱいレモンシュガーに、
レモンシロップを染み込ませたしっとりパウンド。
これぞ、私がこよなく愛するスイーツ。
口いっぱいに初夏の訪れを感じながら、
ブラックコーヒーを味わう。
レモンケーキにはブラックがお似合い。
至福のおちゃのじかん。
ここは大人になった私の秘密基地。
なんにもないけど、なんでもある。
冒険の追憶の中で、私のおちゃのじかんは
まだ始まったばかり。
-韮崎市
料理と器とワインをこよなく愛するママ編集者。
性格がおおざっぱなため、お菓子作りは失敗しがち。
最近は酵母菌を我が子のように可愛がっているらしい。