農cafeZENCHO
~不要不急の時間~
〇月×日
新型コロナウイルスで変わった生活様式。
会話は控えめに、ひとりで、ゆったりと…。
観光地でしょ、とばかりに実はあまり行ったことがなかった場所へも、最近は行ってみようかなと思う。
宿坊が軒を連ねる身延山の入口。
2020年11月にオープンした「迎賓館えびす屋」の横に佇む「農cafe ZENCHO」は、お寺ランチが楽しめることでも知られる宿坊“覚林房”が営むカフェ。
長いアプローチをゆるゆると歩く。
コンセプトはカルガストロノミー。
もともと酒蔵で働く女中さんたちの控室だったというこの場所を、地元の人が憩える場にとリノベーションしたという。
オープンエアが心地いいテラス席には、
古さと新しさが融合する店内へ。
趣のある木によく似合う黒いアイアンをあしらい、アメリカンミッドセンチュリーなモダン家具をしつらえる。
カフェが少ない身延で、ふと立ち寄りたくなるこんなに素敵な空間は、私の不要不急の時間を静かに彩ってくれる。
“これをぜひ見てほしいから”と、目線の高さで吊るされた涙型の美しいペンダントライトは、塩山に工房を持つ吹きガラス作家、小牧広平氏の作品。
ガラスの透け感と程よい厚み、そして流線形のゆらぎが温かな光で包む。
カウンター席に座り、ぼんやりと外を眺めていると、
風と戯れる木々の葉がやさしく、小鳥たちが集う。
晴れは晴れで、雨は雨で
昼は昼で、夕暮れは夕暮れで
様々に表情を変え、その魅力を放つ。
心を「無」にさせてくれる風景。
自然といにしえのものたちに思いを馳せ、ついついオーダーも忘れてしまう回顧のひと時。
本日は、ほうとうカルボナーラのプレートを。
もっちり食べ応えのあるほうとうに、濃厚カルボナーラソースがよく絡む。イタリアンシェフが織りなす本格派のお料理を堪能する。
今週のスープは、大好きなバターナッツかぼちゃ!!
ねっとりとろっとろのポタージュは、まさに食べるスープ。自然な甘さとコクが最大限に活かされた逸品に仕上がっている。
ココナッツミルクとりんごのコンポートで作った非加熱のヘルシータルトは、食後の嬉しいご褒美♪
ドライナツメヤシやカシューナッツなどをミックスした、塩味のあるタルト生地とフィリング、リンゴ煮の最高のコラボレーション!
こだわりのコーヒーとともにいただこう。
心の平穏は、こんな不要不急の時間の中にこそある。
私にとっては、不要不急ではない、愛おしい時間の中に。
-身延町
料理と器とワインをこよなく愛するママ編集者。
性格がおおざっぱなため、お菓子作りは失敗しがち。
最近は酵母菌を我が子のように可愛がっているらしい。