一草庵紬-甲府市丸の内 | 山梨のワインと和食～そば

甲府駅から歩いて約5分。駅前の喧騒をよそに、しっぽり静かに佇む店構えが何ともオシャレな雰囲気を漂わせる。中に入るとすぐ目に入る石臼の奥に、スタイリッシュなバーカウンターが続き、ワインレッドの壁に白いイスが映える。こだわりの蕎麦と楽しめる県産ワインは、様々なワイナリーを取り揃えているのも、堅苦しいお仕着せはなしで飲みたいものを飲んでほしいという店主の思いから。

蕎麦屋というより洗練された大人のBARといった感じだが、店主は35年続く飯田の石臼挽自家製粉純手打蕎麦「一草庵」で修業した正統派。産地にはこだわらず、その時々で一番おいしいと思う旬の蕎麦粉を取り寄せるというポリシーは、ワインのセレクトにも通じる。造り手と最も密にコミュニケーションが取れているワイナリーのものを中心にラインナップ。
素朴なだけに蕎麦の個性が引き立つそばがき、ワインにピッタリのいぶりがっことクリームチーズ、鉄板の山葵を添えたコク深い鴨のローストなど、蕎麦に終わらない魅力に溢れている。

「おいしいものを提供することで、365日分の1食の幸福感を売っている」というポリシーのもと、造り手のバックボーンを何より大切にして仕入れているという。ワインの素性や生い立ちを知ることで、好みではなく質の高い価値あるワインを見極めることができるからだ。ここにおいてあるワインへの絶対的な信頼感は、そんな店主の志に裏打ちされている。

蕎麦の味もさることながら、旨味が生きた温かい汁をも堪能できるかけそば。シンプルがゆえに、店主の感性を最も感じられる一杯だ。温かな汁の中でも、キリッと引き締まったコシを保つ細い蕎麦をするすると口に運び、食べ終わるまでのわずかな変化もこれまた楽しいもの。この繊細で微妙な味わいこそが、職人技の醍醐味といえるだろう。
そばの旨味をそっと後押ししてくれる赤ワインとぜひ。