河口浅間神社にほど近く、外国人観光客で賑わう通り沿いに、富士山をモチーフにしたおしゃれな暖簾が風にたなびく。
こちらは、2024年4月15日にオープンしたショップとカフェを併設する「古民家なかむら」。富士山の大きな暖簾がショップ、ロゴをあしらった小さな暖簾の入口がカフェになっている。

築150年以上という江戸末期に建てられた御師の家は美しい庭園と富士山を望め、ロケーション抜群！カフェ1階のお座敷は大きなリノベーションをあえて施さず、ほぼそのままの姿でお目見えする。柱ひとつをとってもその艶やかな黒光りに、名家で代々磨き上げ大切に守ってきた家ならではの生活感を感じることができる。
一方コワーキングスペースとして2階はすべてを新調し、ミッドセンチュリー風の空間に。こんな素敵な空間をキープしたら仕事もグイグイはかどりそうだ。
※1時間500円/個室1時間1,500円。女子会などでの貸切やイベントスペースとしても相談可。

ここはいわゆるメニューブックはなく、携帯でQRコードを読み込みオーダーする完全キャッシュレス店舗。これぞ和の極み！ともいえる麗しのお重ランチを早速ポチッと。5月からはビーガンお重も新登場予定とのことで、こちらも楽しみだ。

縁側で自然の豊かな表情を楽しんでいると、お待ちかねの「古民家おもてなしお重」が運ばれてきた。お箸はなんと、私が自宅でも愛用している＆CRAFTSのもの！細くて手に馴染み、とっても使いやすいのだ。記念にお持ち帰りしてもOKとのこと。

お料理は“日本古来から受け継がれる家庭の味”をコンセプトに、地元や旬の食材を中心に丁寧に仕上げていく。
共働きが増え、便利なものに溢れた現代、なかなか家庭ではできなくなってしまった下ごしらえや出汁など、細部にまで手仕事を惜しまない。

低温調理でしっとりやわらかなローストビーフは、大塚にんじんのペーストを軸にしたソースで旨味が倍増！大塚にんじんならではの濃厚な甘みと玉ねぎの甘みがミックスし、豊かな野菜の風味が肉汁を包む。そして、一見白いただのお豆腐と思いきや、ひと口食べればこれも味噌漬けになっていて、上品でまろやかな塩味が口の中に広がり…。
滋味に富んだ一品一品に、日本人でよかったと心から思う。

食後には、SCAJ主催のコンペティションで何度も入賞している高橋文哉氏が焙煎したこだわりのコーヒーを。コーヒー専用の美しい琥珀色の急須で鮮やかなターコイズブルーの湯飲みへ注げば、香り立つコーヒーに自然と心も体もほぐれていく。
山梨の森林や湖を感じさせる香りや豊富な果実をイメージした焙煎とブレンドは、深煎りだが程よい苦味に心地よい余韻とスペシャルティコーヒーらしいチョコレートのような風味を感じる。お供には甘じょっぱさがクセになるさつまいもスティックや、サクサク最中の中に胡麻香るアイスをとじ込めたアイス最中をぜひ。

ショップでは様々な富士山モチーフのアイテムをはじめ、カフェで使っている食器なども販売。ツーリスト向けの商品だけでなく、山梨のクラフト作家の作品や本当はすごくいいものなのに、なかなかお披露目の機会がなく知られていないものにも光を当てる。そんな視点こそが「古民家なかむら」ならでは。

例えば、通常廃棄されてしまう紙パックを原料に薬品を使用せず、手漉き紙を制作している「塩山ファクトリー」のメモカードやポチ袋など。障がいのある社員が一つひとつミシンで塗ったカードケースは、やわらかくしなやかな紙質にまず驚くだろう。ここはまさに宝の山。
まだまだ知らなかった山梨の誇れる“モノ”や“コト”で溢れている。