倉田製作所
-sushi washoku-
[ 甲府市 ]

※2020年6月に閉店しました

2019年冬、新たに甲府中心街のぐるめ横丁に軒を連ねた「倉田製作所」。ちょっと風変わりな店名に心惹かれ、中を覗く。人が入り混じる食の文化村のるつぼに佇みながらも、横丁の喧騒を感じさせない、確立された静けさがあった。味わえるのは、寿司と和食という素材の魅力を引き出すソウルフード。そうだ、今夜は人生の楽しみ「食べること」にシンプルにこだわってみよう。

【倉田製作所】という店名が持つ響きと同じ質感を感じる、ジャパニーズモダンな内装。モノトーンで統一された上質、かつ落ち着いた雰囲気の中、明るい木肌の風合いが飾りすぎない素朴なくつろぎを実現する。美しいカウンター席に座り、滋味溢れるひと皿を丁寧に味わい、満腹までの道のりを享受する。日常の中にある、豊かでささやかなご褒美。それこそがここに集い、憩う理由。

伝統の味を独創的に操る

和食を極めたシェフは、世界各国で“ジャパニーズフード”を提案し続けてきた異色の実力派。トラディショナルな和の中に、ほのかに新たな風が香るのも、そんなシェフならではの手腕なのだろう。「見た目より味」というが、彩りも盛り付けも繊細で美しい。前菜には帆立のマリネをバジル風に仕上げ、菜の花の酢味噌和え、甘鯛の南蛮漬けとともに。ひとつひとつが強く主張せず、他の素材との融和によって、個性をさらに引き立てる。

素直に舌が感じる美味

「シンプルに美味しい！と思える」を目指す。味覚や好みは人それぞれ。状況や素材に応じて、常にベストを尽くすシェフの柔軟な「美味」への追求は、海外経験の蓄積に支えられている。鮮度が命のお造りは、これぞ和食の極み！手間暇かかった蓮根団子が入った蒸し物や、しっとりやわらかいさわらを味噌田楽風に焼いた逸品など、どんな美辞麗句よりも真っ先に笑顔がこぼれてしまう。美味しいものは人を幸せにすると、素直に舌が喜ぶ。

料理の完成形を味わう

口に入れたとたんとろけてしまう鮮やかなマグロ、まったりふくらみのあるヒラメ、透明感溢れるシコシコのタイ、さっぱりとした甘みのカニ…どのネタもふんわりにぎったシャリと一体化し、「寿司」としての完成形を成す。シャリの酸味もやわらかで、ネタとシャリが見事に調和。ワンスプーンでいただくウニは、濃厚な甘みと旨みの美味快感に陶酔する。スイーツ好きのシェフが楽しんで作った、最後を飾るデザートで最高の余韻に浸ろう。
おまかせシェフコース 4,800円
前菜、お造り、焼き物、蒸し物、寿司（にぎり5種＋1種）、お椀、デザート
※価格は税別

取材を終えて…

肩ひじ張らずにリラックスして美味しいものを堪能できる、そんなシンプルなお店。5席しかないカウンター席は、程よい距離感を保ち、美味しいお寿司と和食に、心から日本人でよかったと思う。控えめなシェフの人柄が料理に映し出され、お仕着せではない自由な楽しみ方ができるのもいい。美味しいものは美味しい、それだけでいいと素朴にそう思わせてくれる。単品メニューもあるが、コースが断然お得！