キッチンオハナ
~命をつなぐ愛の料理~
〇月×日
娘が小さい頃、最初に教えたこと。
それは“いただきます”の意味だった。
私たちが生きるために口にするすべてのもの。
肉や魚、草や木の実…そのすべてに命があるということ。その命のパワーをいただいて、生かされているということ。
素材の命を大切に思い、慈しみ、理解する。
そんな愛に溢れた料理は、食べた人をやさしい幸せのヴェールで包んでくれる。
赤ちゃんに戻って、母の胸にそっと抱かれるような…そんな気分。
キッチンオハナ。
ハワイの歴史を物語る素敵な言葉「ohana」(家族)。
料理を通じて、世代や時代を超えて脈々と受け継がれていく、命のリレー…。
店主の深い思いがそんな店名から感じとれる。
だから、私はここに来ると「ただいま」と言ってしまいそうになるんだね。
暖かくなって役目を終えたロケットストーブが変わらずに、どっしりと定位置に座っていた。
思わず「お疲れ様でした」と、声をかけてみる。
最近はスタイリッシュな古民家カフェが流行っているけど、
もっともっとシンプルな、
胸の奥底で懐かしさがこみあげてくるような、
流れた時間の重みにそっと寄り添いたくなるような、
そんな空間。
築70年の重厚なお屋敷に、自らで丁寧に手を加えた居心地のいい場所。
鼻をかすめる風の香りが季節を運んでくる。
生姜の香る三年番茶でほっこり。
おひさまの当たる場所でいただく「おひさまランチプレート」は、太陽の恵みをたっぷり浴びた元気な野菜たちがいっぱい!
大きなお皿に7種類のおかず。
厚揚げと大根の煮物は、はるかシルクロードに思いを馳せるウイグル風のスパイシーなカレー味。
ロシアの家庭で定番の水餃子、ペリメニはワンスプーンで。
もっちもちの皮に包まれたペリメニが、家庭料理として子どもからお年寄りまでに愛されている理由がわかった気がした。
ひと口ひと口、味わうたびに舌で世界中を旅する。なんて贅沢!
味噌や甘酒の発酵のチカラをかりたニンジンドレッシングは、主役級の美味しさ
これらすべてが植物性の材料のみでつくられたベジタリアン料理だなんて、肉食女子の私には到底信じられない。
車麩のカツ、大根餅、ひよこ豆のカレー、そして古代米…愛溢れるごはんに、心も体も満たされていく。
“あまいものつき”をもちろんセレクト。
季節によって違った種類が味わえるお楽しみ。今回は苺のタルトを。
大粒いちごの甘みと酸味、カカオの程よい苦みが愛の歌をくちずさむ。
キャベツとリンゴジュースを煮詰めて、アイスに…。
ほんとにキャベツ??うん、キャベツかも…。キャベツだ!
あとからキャベツがちゃんと追いかけてきた。
風趣に富んだ情景の中で享受する、胸に響く料理。
それは、命がつなぐ愛の料理。
ごちそうさまでした。
-北杜市
料理と器とワインをこよなく愛するママ編集者。
性格がおおざっぱなため、お菓子作りは失敗しがち。
最近は酵母菌を我が子のように可愛がっているらしい。