イタシ
ITASHI
[甲府市/フレンチ]
特別わかりづらい場所というわけでもないのに、隠れ家のような密やかな雰囲気が漂う。ガラスのファサードをやわらかな光が透過し、小さな木の扉はささやかな非日常への入口。夕暮れが暗闇に包まれたら、“ITASHI”という美食の劇場が幕を開ける。遊び心とトラディショナルが見事に競演する、麗しのフレンチへようこそ。
白とグレーを基調にした清潔感溢れる空間は、スタイリッシュながらも程よいカジュアル感を兼ね備える。ガラス越しには広々とした個室もあり、個の空間と開放感が心地よく混在する。
独創性に富んだ、高揚感溢れるフレンチ。美味とともに感じる楽しい気持ち。
“楽しくなければ食事じゃない!”それを実感させてくれる。
センスと発想力が息づくひと皿
スペシャルな雰囲気を一気に創り上げるアミューズ・ブッシェが2種類。ゲストをあっと驚かす芸術的なフィンガーフードが、これから始まるリュクスな味わいへのアプローチを盛り上げる。
レンズ豆の上には、春を告げるそら豆とサワークリームのタルト、そして富士桜ポークのリエットをコルネで巻いて…。コースの一番目だからこそ、これからが楽しみになるような、思いがけないひと皿にしたいというシェフの想いが溢れている。
美しいショットグラスで供する前菜は、軽やかな酸味のオリジナルタルタルの甘えび。レモンの泡が優しく包み、バスク地方のエスプレット唐辛子をアクセントにいただく。
フランス文化に根差した「アペリティフ」の愉しみを肌で実感できる、ITASHIのもてなしの美食。会話を楽しみながら食事をスタートさせる、そんな時間を大切にしたくなる。
シャラン産鴨とフォアグラのテリーヌは、都内の一流店で腕を磨いた今井オーナーシェフの力を尽くした逸品。
鴨の骨から抽出した出汁をジュレにとじ込めて、薄~くテリーヌの上に。口の中に入れた瞬間にとろけ出す繊細な旨味…。紫キャベツのマリネと滑らかで上品な口当たりのディジョンマスタードとともに味わう。
メインはフランス産プーレジョーヌのロースト。
濃厚な旨味にジューシーなもも肉がしっとりやわらかく、最高!!骨付きで供され、さらにゴージャス感もアップ。肉のジュレを使ってマリネし、さらに皮を炙って…と、仕込みから完成まで丁寧に仕事がなされる。
付け合わせの野菜が肉に負けず劣らず美味しいのも、食べる頃合いを見計らって根を落とす時間さえ調整するという、妥協を知らない職人魂の結集だ。
乾杯のスパークリングからワインまで、料理とお酒のマリアージュを大切にセレクトする。
でも、もっと嬉しいのが飲めない人にも同じようにワイングラスで、美酒の雰囲気を味わえるようにという心配り。ノンアルコールのスパークリングやドリンクも用意してくれるので、ぜひ相談を。
コース料理のデザートは、より充実した満足感を与えてくれる、まさに最後のご褒美。
出てきたのはふわふわムースのグラニテ。実はこちら、見た目と食べた後のギャップを楽しませてくれる、驚きのひと皿!
一番下にはアプリコットのゼリーが隠され、その上にはなんと杏仁のソフトクリーム、ココナッツのムース、そしてアプリコットのグラニテという四重奏のハーモニーを奏でる。
経験に裏打ちされた技とセンスが凝縮した今井シェフのコースは、食べる人を新鮮な驚きと感動で満たしてくれる。
※コース内容は季節ごとに変更。掲載内容は5月のメニューより。
取材を終えて…
清楚でおしゃれな雰囲気ながら、肩ひじ張らずに落ち着いて楽しめるカジュアルさも持ち合わせているのが、この店の魅力。オープンキッチンからはシェフがリズミカルに調理する姿も垣間見られる。今井シェフのこだわり抜いた遊び心を忘れないコースは、いつ訪れても新鮮な驚きに溢れ、多くのファンの心をつかむだろう。