Release:22.08.26
yard(ヤード)
~夏の輝き~
〇月×日
北杜の夏は美しい。
溢れる若葉が鮮やかな青葉へ、そして次第に濃い緑色へと変化する夏は、本当に綺麗だ。
でも、私はむしろ夏の緑の輝きが褪せていく晩夏のほうが好きだ。
ギラギラしていた太陽も黄色く弱ってきた、そんな昼下がりは、北杜の風光明媚を“庭”にぎゅっととじ込めた場所へ。
小淵沢に古くからある小さな宿に併設し、2022年6月にひっそりとオープンしたカフェ「yard(ヤード)」。
時間を気にせずお茶を飲んだり、お庭を散歩したり…そんなライフスタイルを叶えてくれるダーチャみたい。
緑に囲まれた静かな店内は、静穏なる世界の中にどっぷり浸れる隠れ家。
入口にある本棚からふと手にとった一冊との出会いもまた、今日という日を彩るにふさわしい。
旅から生まれた世界各国の料理に秘められた、数えきれないほどのストーリーが、美しい写真とともに語りかける。
忘れられない“あの味”を再現したくて、想像力を膨らませ、舌と記憶を頼りに家のキッチンに立ったことが、私にもあったっけ。
遠くに旅することがままならないこのご時世、視点を少し変えれば、地元のお出かけだって今までにない発見や感動の旅になるものだ。
私が本日出会った、忘れられない“あの味”はこちら、キノコのサンドイッチ。
私は無類のキノコ好き♪
しめじやまいたけ、エリンギなど、キノコの美味しさをぎゅっと凝縮したオイル漬けをたっぷり挟んだチャバタサンドは、皮の香ばしさと中のもちっとした食感のコントラストが楽しい。
さらに、地元産ベーコンが素材の旨味を濃縮し芳醇な味わいをプラスする。
食後のスイーツには、ウィークエンドシトロンを。
“大切な人と週末に食べるお菓子”という意味が込められたフランス生まれの特別な焼菓子だ。
レモンアイシングでコーティングされたバターケーキは、生地にもレモン果汁を贅沢に使用し、レモンの爽やかな酸味が口中に広がる。
コーヒーは、長野県茅野市にある自家焙煎珈琲豆専門店「MOLINO COFFEE」の豆を使用。
香り高くコク深いけど、重すぎず後味もすっきりといただけ、ウィークエンドシトロンとの相性も抜群。
緑の中に少し秋を感じながら、まどろむ昼下がり。
過ぎゆく夏の輝きを胸に、人は何を思うのだろう。
郷愁、憧憬、寂寥、遷移…
美しさと鬱陶しさをあわせ持った夏が終わる。
-北杜市
料理と器とワインをこよなく愛するママ編集者。
性格がおおざっぱなため、お菓子作りは失敗しがち。
最近は酵母菌を我が子のように可愛がっているらしい。