Release:20.02.21
黎明荘
~好きでつながる道~
〇月×日
私は空を見るのが大好き。
昔からよく砂浜や草の上にごろんと寝ころがって、両手を広げ、どこまでも続いていく空を見上げていた。石川啄木さながらに心が空に吸われていくような、そんな何ともいえない解放感がたまらなかった。
ここの駐車場につくと、そのときの感覚がよみがえり、思いっきり両手を広げ、空を見上げる。
鬱蒼と生い茂る木々の中、埋草神社の隣に佇む築120年以上の古民家カフェ「黎明荘(れいめいそう)」。
昔は神輿が出たりお祭りをしたりと賑わっていたが、先代が亡くなり続かなくなっていった。
そこで、地域の公民館的役割を担いたいとリノベーションしたのがきっかけで、現在のようなカフェになったんだとか。
実はこちら、あのレミオロメンの聖地にもなっていて、かつてデビュー前に彼らが母屋で作詞・作曲したり、練習場所に使っていたんだそう。
「畑仕事しながら、いろんな曲がきこえてきましたよ。後々になってテレビで見て、あれ、よく練習してた曲だわ!なんてねぇ」と笑う店主・藤巻さんのエピソードを聞きながら、長い長い時間をかけて培われてきた、懐深い魅惑の空間に包まれる。
古民家特有の木材の色味や質感、土間や縁側など、古き良き日本家屋の空間が作り出す雰囲気は、何ともドラマティックでミステリアスだ。
黒光りして重厚感漂う太い梁や大黒柱に、長い年月を経た歴史の重みを感じながら、 新しい景色と癒しのひと時を紡ぐ。
その日の気分で1階や2階、窓際や庭を一望できる席など、いつも決まった席に座らないのが黎明荘の醍醐味。
今日は、2階の窓際のソファ席が私の特等席。爽やかな風を頬で感じながら、小鳥たちのおしゃべりに耳を傾ける絶好のポジションだから。
そして、黎明荘の人気メニュー、牛すじ煮込みカレーとハンバーグの両方を楽しみたい欲張りな欲求を叶えてくれる「カレードリア」を堪能!もりもりのサラダ付きも嬉しい♪
「手作り」にとことんこだわる藤巻さんの料理は、ウンチクなしに「美味しい!」と笑顔になる…そんなママの味。
カレーのスパイスの旨味はしっかりあるのに、辛みが際立たないのは、自家農園のぶどうをじっくり煮込んでいるから。
ふっくら焼き上がった手作りハンバーグに、ほのかな甘さを感じるカレーとチーズがとろける。
食後のスイーツは、花びらのカッサータとお花のクッキーを。
完全無農薬栽培で、土も厳選し種から栽培している「リコプリエ」のエディフルフラワーを使った見目麗しいお菓子たち。
ナッツやドライフルーツをたっぷりチーズクリームに混ぜて冷やして固めた、なめらかで濃厚なアイスケーキは、あったかいカフェオレといただきたい。
お花のクッキーは、アイシングにレモンが香り、さっぱり。
ここには、私が幼いころから慣れ親しんだものや大好きなものがいっぱいある。
ママが愛したミニチュアの世界と香水瓶のコレクション。
実家のリビングとよく似たヨーロピアンな椅子に、ヴィンテージの器。
高くそびえる緑と雲泳ぐ空。
併設されたショップには、毎年のお楽しみ「ガレット・デ・ロワ」のフェーヴまで!
私とこの場所は、きっと“好き”でつながっている。
遠くても、曲がりくねっていても、でこぼこ道でも、「好き」が導く道の先には、いつも新しい景色と癒しのひと時が待っている。
料理と器とワインをこよなく愛するママ編集者。
性格がおおざっぱなため、お菓子作りは失敗しがち。
最近は酵母菌を我が子のように可愛がっているらしい。