Release:21.12.20
オーヴァーチュア
Over ture
[北杜市大泉町/フレンチ]
2024/1/8 より休業中。
八ヶ岳南麓に佇む、こだわりの地鶏と卵の中村農場が営む「ル・ピオニエ」。生産者直営とあって地産地消が息づくフレンチで定評があるが、記念日にはこちらとは一線を画すシェフと創り上げるフルオーダーの「Over ture」を。
出かけよう、秘密の入口から導かれる、舌と心が感動で包まれる優々たるひと時を楽しみに。
レストランとは別の、「Over ture」ゲストのみが知り得るアプローチから誰にも会うことなくたどり着いたのは、1日2組限定の完全個室。
空間だけでなくシェフをも独占する、まさにプライベート・レストランだ。そこにあるのは、パーソナルなサービスとハイクオリティな料理のもてなし。
洗練された雰囲気の中で供される、手間をいとわない職人魂が生んだ珠玉のコースのはじまり。自由奔放な感性と綿密なクリエイティブがはじける。
オーダーメイドの贅を味わう
目を奪われるプレゼンテーションから始まる本日の前菜は、クスクスに見立てたカリフラワーと、脂ののった秋刀魚にゆずが香る。最初のひと皿から強く引き寄せられ、あとはもう感興の赴くままに。
二段になった器をとると、白いスモークが立ち上り、中には鮮度が光り抜群の旨味に溢れる活〆カンパチのトロのカルパッチョ仕立てが。
中津川産チコリをレモンジュースととろとろにしたクーリとのハーモニーが、シェフの引き出し豊かなアイデアと技を感じさせてくれる。
山梨市にある矢崎桃園の“キャビアライム”を絞ると、外見のごつさとは裏腹に、キラキラした粒状の果肉が溢れ出て、山椒にも似た香りが鼻をかすめる。
柑橘らしい清涼感もあり、記憶に残るコースのはじまりを五感で吸収する。
器もご馳走…そう心から感じるOver tureのひと皿は、とにかく美しい。
外側は香ばしくパリッと、中はとろりと甘い白子のムニエルは、焦がしバターの中にバルサミコ酢の酸味がほんのり。
さらに、チーズを感じさせるカシューナッツのピューレとゆり根チップスを添え、まるでお菓子のような味わいに。
今まで出会ったことのないひと皿は、絢爛たる素材が光る。
丁寧に炊き上げマリネにした若桃と甘~いフルーツほおずき、そして軽く炙った帆立のフルーティで爽やかな味わいにウットリ。
さらにカブを2種の味わいからアプローチする。マリネしたあやめ雪蕪のキャビアとカラスミのマリアージュを楽しみ、生クリームのような白蕪のエスプーマに包まれて、至福の時間にとろけていく。
中村農場のホロホロ鳥に卵黄を練りこんだラビオリは、香り高いブラウンマッシュルームやほうれん草も加わり、ここでしか味わえないスペシャルなシグネチャーになりそうな予感。
ごぼうのカプチーノソースには鶏出汁もしっかり効いている。
本日の魚料理は、ウロコの付いた甘鯛を高温で揚げた松笠揚げをポルチーニ茸のリゾットと。
パリパリの笠が開いた美しい出で立ちで、ふっくらやわらかに仕上がった甘鯛を世界中で絶賛されるベッピーノ・オッチェリバターのソースの上にセッティングする。
これこそが、センスが際立つ小池流独創的アレンジを堪能できる醍醐味にほかならない。
肉料理、デザートはシェフ自らが部屋まで出向き、ストーリーを紹介してくれる。
この日のデザートはレモンカートのムースにピスタチオクリーム、ミカンのハチミツクリームの2種のサブレで。
エディフルフラワーをあしらい、生のヘーゼルナッツを削って作った、風味と香りが秀逸なるジェラートが華を添える。
口どけのよいメレンゲは、もちろん中村農場の卵白で、舌を楽しませてくれる。
そして、コースを締めくくる小菓子とカプチーノ。
すべてオーダーメイドで完成する唯一無二のオリジナルコースに相応しいラストを飾る。
この感動的な美味しさは、特別な日の思い出とともに、いつまでも色褪せることはないだろう。
取材を終えて…
1日2組のみの完全個室というプレミアムな空間と、オーダーメイドの見目麗しいコースを叶えてくれるプライベートシェフを独占できる “旬の素材とスペシャリテ”「Over ture」。
ゲストがあっと驚く嬉しいサプライズ演出が得意なオーナーシェフ、小池さんこそ真のエンターテイナーだと確信する。
洗練されたしつらえに心を落ち着かせ、ゆっくりとくつろげる静謐時間は、慌ただしい日常の中でなかなか手に入らない贅沢だ。
料理人の人柄や想い、真摯に向き合う姿がひと皿ひと皿から透けて見える。