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Release:23.11.10

ヒュッゲに生きる起業家 村本 彩さん

プロフィール

福岡県出身、北杜市在住。
九州大学経済学部を卒業後、サントリー株式会社(現サントリーホールディングス)に入社。
営業部を経て、マーケティング部でブランドマネージャーとして数々の新商品開発やマーケティング戦略を担当する。2018年独立起業。
2023年8月山梨県北杜市に体験型ワーケーション施設「ヒュッゲの森」オープン。
理想の姿を追い続け
たどり着いたヒュッゲな生き方
標高1,000m。北杜市の中でも標高の高い八ヶ岳南麓には高原特有の爽やかな風が吹き抜け、空と大地に思い切り体を投げたしたくなるような、そんな開放感に満ち溢れる。
清涼な空気を胸いっぱいに吸い、今年の夏にオープンしたばかりの体験型ワーケーション施設「ヒュッゲの森」を訪れた。
ヒュッゲに生きる起業家 村本 彩さん
出迎えてくれたのは「ヒュッゲの森」プロジェクトリーダーであり、irodori Branding株式会社代表を務める村本彩さん。
ヒュッゲに生きる起業家 村本 彩さん
「とにかく立ち止まることが苦手で、いつも全力投球で走っちゃうタイプなんです」と笑う村本さんは現在二児の母で、仕事と家庭、子育てに奮闘する毎日を過ごしている。
「忙しい時にこそ、本当に自分が一番大切にしたことを見失わないよう、ヒュッゲな時間を作っています」。
ヒュッゲに生きる起業家 村本 彩さん

「やってみなはれ」に学んだ会社員時代

もともとモノ作りが大好きだった村本さんは、“ゼロから生み出す仕事をしたい!”とマーケティング部を希望し、サントリー株式会社に入社した。
マーケティング部はサントリーの中でも希望者が多い、いわゆる花形部署。そんな部署にいきなり配属されるわけもなく、最初に村本さんに与えられた仕事は、首都圏のスーパーの営業だった。
「大人気のマーケに引っ張ってもらうには、まず自分を売り込まなければって思ったんです。大企業でイチ社員にスポットが当たるためには、営業で実績を作るしかない。それも驚くべき実績でなければって」。
ヒュッゲに生きる起業家 村本 彩さん
サントリーのスローガンは「やってみなはれ」。
失敗を×にしない、チャレンジ精神を育てる社風にも背中を押され、村本さんのやる気は全開!当時の尊敬する上司の「ヒット商品とは商品力・宣伝力・営業力の3つのパワーが掛け算になって生まれるんや」という言葉にヒントを得て、どんなにいい商品もただ並べているだけでは売れないと気づいた。
そこで、売り場づくりからオリジナルに考え提案したところ、みるみる脚光を浴び、面白いように担当商品が売れ始めたのだった。
ヒュッゲに生きる起業家 村本 彩さん

育休を経て、復職後に見えた風景

「見せ方によって同じ商品でも売れ方が変わること」を肌で感じた村本さんは、「伝え方」「伝わり方」の重要性を的確に捉え、ブランディングすることで売り上げをグングン伸ばしていった。
売り上げの異常値を次々にたたき出し、入社4年目で念願のマーケティング部に異動、ブランドマネージャーに大抜擢。
ヒュッゲに生きる起業家 村本 彩さん
順調にキャリアを積み重ね、第1子出産の育休明けに、ついに新ブランドの立ち上げのチャンスを手にすることに。
開発したのは「アルコール1%のお酒」。酔うほどではないけど、少し高揚することでパフォーマンスが上がったり、心がほぐれたり…エナジードリンク的な低アルコールがコンセプトだったが、狙っていた内容と価値がダイレクトに伝えられず、あっけなく終売。
ヒュッゲに生きる起業家 村本 彩さん
強い思いがあっただけに心折れる瞬間だったが、その後も新ブランド開発などの機会があったという。
「さすがに二度目は失敗できないというプレッシャーで、ピリピリしていました。ちょうど子育ての壁にもぶつかったりしていて。かっこいいワーキングマザーになりたくて、やっと憧れの“働くお母さん”になったら、実際の私は全然カッコよくなくて…」。
ヒュッゲに生きる起業家 村本 彩さん
「何かがあってない…そう感じて、キャリアも人生も見つめ直そう」と思っていた時に、第二子を妊娠。
「いったんリセットしてこれからを見据えたかったので、育休中にはキッズラインの育休インターンシップにも参加し、多くの人に出会い、刺激をうけました」。
そこで出会ったのは、ママでありながらベンチャー企業を立ち上げたり、軽やかに転職をしている人たちだった。
「すごい衝撃を受けました。それで私も、もっと違う世界を見てみたくなったんです」。
ヒュッゲに生きる起業家 村本 彩さん

ヒュッゲを感じられる時間の中で

選択肢は自分が思っているよりずっとたくさんあることに気づき、大好きだったサントリーを退職。1歳と5歳の子どもをかかえての起業を決意し、とにかく頑張り屋の村本さんはスピードを緩めることなく仕事に、育児に、家事にと奮闘したという。
そんな時ふと目にした何気ない親子の姿。夕暮れの海辺に、自転車でお父さんと娘がふらりと来て、遊んで帰っていった。
ヒュッゲに生きる起業家 村本 彩さん
「多分その親子にとっては、きっと何気ない日常のワンシーンだったのだけど、それが逆に私にとっては印象的だった。今でも忘れられない風景なんです。私が本当に欲しかったものはこれなんじゃないかって」と、村本さんは当時を振り返る。
「起業したら自分で自由に時間が作れると思っていたのに、無意識に仕事の評価とか、社会的な名誉とかを追ってしまって、気づいたら会社員の時と変わらなくなってしまっていた。私が心の底から本当に欲しているのは、ただそこにあるものを美しい、愛おしいと感じられる時間。それを家族や大切な仲間と感じられる時間だったんです」。
2022年1月に家族で北杜市に移住し、東京での生活を手放した。
ヒュッゲに生きる起業家 村本 彩さん
2023年8月には、宿泊機能付きコワーキング&交流スペース「ヒュッゲの森 Life&Work」をオープン。
ヒュッゲに生きる起業家 村本 彩さん
「人はとかく、わかりやすい成果物に飛びつきやすいけど、むしろそのプロセスにこそ価値がある。そのプロセスにどれだけ時間を費やせるか、そんな場所を作りたかった」と村本さん。
濃緑の森の香り
あたたかな木漏れ日
抜けるような青い空
普段の生活の中にもある、ごく当たり前の風景なのに、ただその美しさに気づかないだけ。
ヒュッゲに生きる起業家 村本 彩さん
「ヒュッゲの森は、本当は自分のためにつくったんです。私自身が人生の中で、この大切なことを忘れないために…」。
忙しい毎日の中で置き去りにしてしまった心豊かになれる時間を取り戻し、その体感と記憶をもってまた日常に帰っていく場所。いつでも思い出せる風景がここにある。
ヒュッゲに生きる起業家 村本 彩さん

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