2022年9月13日
笛吹市出身、甲府市在住。
一ノ瀬瓦工業五代目瓦葺士。
一ノ瀬瓦工業五代目瓦葺士。
22歳で家業を継ぎ、一ノ瀬瓦工業に入社。
2015年アメリカのイェール大学主導の日本建築プロジェクト “Japanese Tea Gate Project”に瓦葺士として参加。
2016年瓦の新ブランド「icci KAWARA PRODUCTS」を立ち上げ、kawara クリエイターとしてkawaraの新たな可能性を国内外に発信。
2015年アメリカのイェール大学主導の日本建築プロジェクト “Japanese Tea Gate Project”に瓦葺士として参加。
2016年瓦の新ブランド「icci KAWARA PRODUCTS」を立ち上げ、kawara クリエイターとしてkawaraの新たな可能性を国内外に発信。
瓦からkawaraへ…
瓦屋をクリエイティブな仕事に
瓦屋をクリエイティブな仕事に
機能性はさることながら、建物のイメージを大きく左右する屋根。そんな屋根のプロ集団「一ノ瀬瓦工業」は瓦一筋で100年以上を誇る笛吹市にある老舗瓦屋さん。
「つい15分くらい前も屋根に上ってたんですよ」とやってきたのは、朝黒く日焼けした肌に無邪気な笑顔が眩しい一ノ瀬瓦工業五代目、一ノ瀬靖博さん。
物心ついたときから、家業の歴史を守る責任みたいなものは何となくは感じていた、という一ノ瀬さん。
でも、“そのまますんなりは嫌だ”と敷かれたレールに抗いたい気持ちから、高校卒業後は東京に出てミュージシャンを目指した。しかし想像以上に甘い世界ではなく挫折や苦悩の日々を余儀なくされる。
音楽活動に続き、絵を描いてみたりと、自分自身の表現で何かできないかと、自分なりの表現を模索していた。
でも、“そのまますんなりは嫌だ”と敷かれたレールに抗いたい気持ちから、高校卒業後は東京に出てミュージシャンを目指した。しかし想像以上に甘い世界ではなく挫折や苦悩の日々を余儀なくされる。
音楽活動に続き、絵を描いてみたりと、自分自身の表現で何かできないかと、自分なりの表現を模索していた。
「そんな中で、正直“継ぎたい…”というより、自分がやらなくちゃ、これで終わっちゃうなって思ったんです。だから、もう意地張るのはやめて帰ろうって」。
自分が継がなければ、昔から脈々と受け継がれたものが全部分断されてしまう。
すべてがモノクロになって、崩れてなくなってしまう。
「小さい頃からいつでも変わらずそこにあった“瓦”の中に、自分なりの表現を考えていけばいいんだ」。
すべてがモノクロになって、崩れてなくなってしまう。
「小さい頃からいつでも変わらずそこにあった“瓦”の中に、自分なりの表現を考えていけばいいんだ」。
一ノ瀬さんが腹をくくり、そう決意した瞬間だった。
知らなかった瓦の世界
いざやってみると、瓦葺職人としての仕事は思った以上に大変なことの連続。
訓練学校もあるにはあるが、ほとんどが親方への弟子入りから始まる。
まずは“手元”として土を練り、瓦を屋根へ上げる。職人さんの仕事をとにかく見様見真似で修業していく世界なのだ。
訓練学校もあるにはあるが、ほとんどが親方への弟子入りから始まる。
まずは“手元”として土を練り、瓦を屋根へ上げる。職人さんの仕事をとにかく見様見真似で修業していく世界なのだ。
「屋根の上は本当に過酷。やめたくなったことも数えきれないけど、瓦屋根が日本の歴史や古きよき景観をどう担っているのか知っていくたびに、職人の仕事もまたひとつの“芸術”だなって」。
京都の街並みは世界中の人が認める、まさにクールジャパン。その景観を支えているのが、瓦屋根の京町家風民家が並ぶ街並みなのだ。
「やってみたら大変な割に職人の世界にリスペクトがないと感じた。だから、もっと瓦葺職人をクリエイティブな仕事として、価値を高めたいと思ったんです。世界からも注目されるひとつの要素として、瓦がどういうものなのか、日本文化の中で瓦をどう構成していくのか、もっときちんと伝わるようにと考えるようになりました」と一ノ瀬さん。
それからは日本全国の寺に足を運ぶなど、瓦の表現について深く学ぶようになったという。
瓦を屋根からおろし、日常に
約1400年にわたって日本家屋を守り続けた瓦は、機械化が進む現在でも基本的な製法はあまり変わっていない。
北から南まで網羅でき、日本の風土に合ったいぶし銀の瓦は、経年劣化を楽しめるのも魅力のひとつ。
北から南まで網羅でき、日本の風土に合ったいぶし銀の瓦は、経年劣化を楽しめるのも魅力のひとつ。
使っていくほどに味が出て、いぶし銀が次第に変化し馴染んでいく。50年、100年たたないと出せない、独特の雰囲気を醸す。
屋根としての機能性だけではなく、鬼や獅子などの鬼瓦には厄払いの役割があったり、屋根に飾られるシャチホコは家事から家を守る水の神様だったりと、1枚1枚の瓦にはたくさんの思いやストーリーが込められている。
瓦の中にアート性を感じた一ノ瀬さんが着目したのが、瓦を屋根の上からおろし、もっと日常の中に溶け込ますことだった。
人が生活するうえで最も身近で必要不可欠な「衣食住」×瓦で発信できないか。
屋根瓦が「住」なら、「食」ではカフェをオープンさせ、食器やカトラリーに瓦をプラス、「衣」はプロダクト事業部を立ち上げ、ファッション、インテリア、雑貨などを手掛けることに。
屋根瓦が「住」なら、「食」ではカフェをオープンさせ、食器やカトラリーに瓦をプラス、「衣」はプロダクト事業部を立ち上げ、ファッション、インテリア、雑貨などを手掛けることに。
瓦からkawaraへ
2016年一ノ瀬さんはついに、「日本のヒトカケラを屋根の上からテノヒラの上に」をコンセプトに、デザインを楽しむ達人メディアクリエイターのハイロック氏をアートディレクターに迎え、「icci KAWARA PRODUCTS」を誕生させた。
決して華やかではないが、クールでシックないぶし銀の世界観は、瓦に馴染みのない若い世代にも“かっこいい”と、すっと自然に受け入れられ、日本のモノづくりを未来につなぐ。
その証拠に2019年笛吹市石和町にオープンしたコーヒースタンド「icci KAWARA COFFEE LABO」は若者から幅広い年代のお客さんで連日大盛況!
瓦素材のマグやプレートを手に、本格コーヒーや美味しい料理と共に、瓦の美しい銀色を手のひらから感じ取る。
「伝統ある日本の瓦の本質を変えることなく、世界というレンズを通して新しいカタチを発信し続けたい」という一ノ瀬さん。
屋根の上からテノヒラの上に、日本が誇る美しいkawaraの魅力をもっと身近に。
そしてまたいつか、新たな価値をひっさげ、屋根の上に戻っていくのだろう。
そしてまたいつか、新たな価値をひっさげ、屋根の上に戻っていくのだろう。
一ノ瀬さんの野望は、そんな進化したKAWARAの住宅エリアを創ること。
日本の若者にこそ、日本の文化をその手で掘り起こしてほしい。
自らの信念を貫く力強い背中に、これから始まる瓦の新たなる世界が広がっていた。
日本の若者にこそ、日本の文化をその手で掘り起こしてほしい。
自らの信念を貫く力強い背中に、これから始まる瓦の新たなる世界が広がっていた。
「瓦が私たちの暮らしを豊かに彩る価値ある存在だと知って欲しい」という願いを込め、100年の歴史を持つ一ノ瀬瓦工業のブランドムービーが公開
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