Release:22.08.05
暮らしの道具と喫茶 やまいち
~日常を彩るマリアージュ~
〇月×日
いつしかまわりの目が気にならなくなって
無理して背伸びする必要もなくなって
身も心も正真正銘“オトナ”になった今、自然体でおひとり様を楽しめるようになった。
そんな私がふらりと、ひとりで立ち寄る場所、
「暮らしの道具と喫茶 やまいち」。
アパートの1室に控えめな看板のみ。
知らなければなかなか行き着かない小さなショップ&カフェ。
大好きなお店だからいろんな人に知ってほしいけど、本当は私だけの秘密の隠れ家にしておきたいような…。
店内には、店主の坂本沙織さんが選りすぐった全国の作家さんたちの器や、長く使われ続ける暮らしの道具が揃い、ショッピングしながら喫茶を楽しめる。
新しい器に出会うと、どんな料理を盛り付けようかとワクワクして、器に似合うレシピをあれこれ考えたくなる。
私にとって器は、まだ見ぬ料理へのイマジネーションをかきたてる、新しいキャンバスみたいなものだ。
最初は目に留まらなかったのに、喫茶で何回も使っているうちにその良さをだんだんと実感して、ついにはたまらなく欲しくなってしまう…そんなことがここではたびたびある。
そのひとつが、松本克也氏のこの木のお皿。
鉄と木を反応させて色付けする技法で作られ、表面をガラスコーティングしているから普段使いしやすいのだと坂本さんが教えてくれた。
グレーがかった何とも言えない色合いと、この独特の冷たい感じ…。
なるほど。
私の大好きなレモンケーキは、このリム皿で供されることが多い。
「木の温もりとは対極にある、この鉄の冷たさが好きだ」と気付くまでに、一体何回このレモンケーキを食べただろう。
レモンの皮と果汁をたっぷり使い、サワークリームを生地に練りこんだ坂本さんのレモンケーキ。
さっぱりと濃厚が共存するこのケーキには、木なのにとびきりクールなこの皿が一番似合う。
そして。
コーヒー好きの私が、ここに来るとジュースの誘惑に負けてしまうという、魅惑の自家製シロップジュース!
今の季節は梅。
畑でとれた梅から手作りしたシロップは、程よい酸味に梅の甘みや旨味がじんわり感じられて、とっても美味しい!!
「ものを大切に、時に修理しながらお気に入りの器と長く付き合っていくこと…それが毎日に暮らしを楽しく、豊かにしてくれる」と、金継ぎのワークショップも。
私はきっとそんな坂本さんが大好きなんだと思う。
有名パティシエの見目麗しいスイーツもいいけど、
やわらかな春の日差しのような彼女が、美しい白い手で丁寧に手作りしたお菓子を、心を寄せて大切にセレクトした器にセットしてくれる…。
こんなひと時を日常にしたくて、私はやまいちに通うのだろう。
“毎日食べたくなるような、背伸びしないお菓子”と
毎日使い続けることで、愛しさを増す器。
心ときめく、いつもの日常のマリアージュ。
-甲府市
料理と器とワインをこよなく愛するママ編集者。
性格がおおざっぱなため、お菓子作りは失敗しがち。
最近は酵母菌を我が子のように可愛がっているらしい。