Release:23.12.15
寺茶房 喫茶去×OneNoteCoffeeRoaster
~点と線
〇月×日
最近、結婚を選択しない若者が増えているという。
きっと理由はいろいろあるけど、結婚もメリット・デメリットのものさしではかられるようになったからじゃないかと思う。
無数の点を重ねていったら、気づかないうち細い線になっていて…その線を長い間紡いでいったら、いつしか太い太い、ちょっとやそっとでは切れることのない線に成長する。そして、人はそれを絆とよぶ。これが私の結婚のイメージ。
私の日常も、また無数の点で彩られている。
その点のひとつ、 “いつも”をリセットしてくれる、たゆたう水の輝きにも似た特別な点。
都留市夏狩の長慶寺の敷地にあるお寺カフェ「寺茶房 喫茶去×OneNoteCoffeeRoaster」。
長慶寺の住職が、もともと夏狩にあったロースタリーコーヒースタンドの常連客だったことが縁で、この“長慶寺×OneNoteCoffeeRoaster”のコラボレーションが実現したのだという。
境内の木々が美しく色づき、木の葉がはらはらと舞う昼下がり。
お寺という日常から切り離された厳かで清浄な空気感に、自然に背筋が伸びる。
凛とした美しさに包まれ、スーッと余計な力が抜けていく。
ほのかなお香の香りが、脳内と心の緊張をほどき、体中に静謐な時が流れ始める。
コーヒーと景色と食事、そして心潤うひと時に、ボサノバの旋律をのせて憩う。
普通は食後のコーヒーなんだろうけど、ここにきたら、まずハンドドリップコーヒーを飲みたい。
カップから立ち上る湯気と共に、鼻孔に抜けて香り立つアロマ。
甘・酸・苦などの風味のバランスを意識した、調和がとれた中深煎り「ワンノードブレンド」のすっきり澄んだ後味が心地いい。
ランチには、オーナーこだわりの手作りスパイスチキンカレーを。
観光客だけでなく、地元の人たちにもゆったりと滞在してもらえる拠点になりたいという思いをこめて作った、子どもから年配の方まで美味しく食べられるマイルドなカレーだ。
チキンは1日ヨーグルトでマリネしてから煮込み、旨味がぎゅぅぅぅっと凝縮。
ほろりと口の中でほどけるやわらかさに、自然と心の奥底までほぐれていく。
辛いもの好きの私は、ラー油からインスパイアされた自家製ホットソースをイン。これ、かなり辛いので、入れすぎには注意だ。
どうしてもフレンチトーストが食べたくて、カレー後にはちょっとヘビーだけど、のんびりと時間をかけて楽しんじゃえばいいっか。
地元ベーカリー「ま~ころ」で特注で焼いてもらった細めのソフトバゲットで織りなすフレンチトーストは、清流に揺れるバイカモの花をイメージしているとか。
なんて素敵なんだろう。
長慶寺の池には富士山の湧水が流れ出し、毎年秋には可憐な白い梅のようなバイカモが見頃を迎えるという。
その景色を思い浮かべながら食べたら、爽やかなマーマレードが口の中で華やかに花開いた。
さすが、世界マーマレードアワードで銀賞受賞経験を持つ「プラスコーヒー・タカノ」のコンフィチュール!
山々に囲まれたいつもの見慣れた風景も、心と体を潤しととのえてくれるほんの数時間も、今日の中のたくさんの点から温もりややさしさがすーっと染み渡っていく。
こんな愛おしい小さな点が、わたしのこれからの線を描いていくのだ。
料理と器とワインをこよなく愛するママ編集者。
性格がおおざっぱなため、お菓子作りは失敗しがち。
最近は酵母菌を我が子のように可愛がっているらしい。