Release:24.11.08
焼菓子とインドカレー うぐいす
~ターリーが映す心の原風景
〇月×日
「この道はいつか来た道、ああ、そうだよ…」
胸がきゅんとなり、郷愁にかられる北原白秋の詞。
幼い日の思い出と、おぼろげながら心の奥に映る原風景に気持ちが揺さぶられるからだろうか。
山梨出身でもない私が、この詞を思い起こす場所がある。
塩山の大菩薩ライン沿いにひっそりと佇む「焼菓子とインドカレー うぐいす」。
店内に入ると、昔練馬区にあったおばあちゃんちと似た空間が私の心を穏やかに包む。
ここにはあの幼い日と同じ空気が流れている。
時間は今も昔も変わらない速さで進んでいるのに、あの頃はふわりとやさしく風が吹き、小鳥のさえずりや時計の針さえゆっくりと感じられた。
古民家を改装した店内は、自然素材を活かしたほっこりと温かみのある雰囲気に溢れている。
この地をカフェの場所に選んだのは、店主が暮らしていた北インドのリシケシの風景に似ていたからなんだそう。
深い緑に囲まれた静寂の中で、大地の力強さとエネルギーがみなぎる。遠く離れたリシケシの地に思いを馳せ、席へ。
ここでいただくのは、インド版定食「ターリー」。
ヒンディー語で“お皿”を意味するターリーにはカレー3種と副菜2~3種類、アチャール、チャパティに、5分づき日本米とバスマティライスのミックス米が付く。
本日は定番のひよこ豆カレーにゆでたまごのカレー、キャベツのカレーの3種類をチョイス。
副菜はじゃがいものサブジやビーツのポリヤル、ゴーヤのサブジ、ナスや大根とニンジンのアチャールなど彩りも美しく、辛み、酸味、食感のバリエーションがとっても豊かだ。
ひと口食べれば、様々な複雑な味わいのコラボレーションに、14億もの人々がひしめくインドの深遠な食文化を肌で感じずにはいられない。
ひと皿にあらゆる食の魅力を詰め込んだターリーが、ヒンズーやイスラム、仏教など宗教の違いをはじめ、多様な民族と文化が複雑に入り雑じるインドの原風景を映し出す。
食後には、バターや卵不使用の100%植物性の焼菓子をいただこう。
米粉やひよこ豆粉を使ったパウンドケーキやレモンケーキなどもあり。
小麦粉OKの私はプレーンスコーンとインド産お豆のオーガニックコーヒーを。
素朴でシンプルなスコーンは、ふわ、サクっとしたお見事な食感でまさに絶賛されるべきスコーン!
インドの農園から届いた高品質なスペシャルティコーヒーを日本国内で焙煎した一杯と共に。
美味しい焼菓子とインドカレーが心を満たし、心の奥の懐かしい原風景を描き出す。
自然の中で愛する人と食卓を囲む幸せは、きっとインドも日本も同じだね。
料理と器とワインをこよなく愛するママ編集者。
性格がおおざっぱなため、お菓子作りは失敗しがち。
最近は酵母菌を我が子のように可愛がっているらしい。