Release:24.05.31
Alp Shop&Studio
~うつわの魔法
〇月×日
私は小さい頃から料理が好きだった。
そんな私に母が買ってくれた小学館の「たのしいクッキング」。
小学生向けのレシピ本で、どれも簡単に作れるものばかり。
トマトをくりぬいてお皿に見立てたり、バゲットをうつわがわりにアレンジしたり、ケーキを可愛くデコったり、そんなワクワクするアイデアがいっぱいだった。
きっと味は大したことなかったと思うが、手の込んだ盛り付けや可愛いうつわアレンジに、家族はみんな驚き、褒めてくれた。
思えば、これが私の“うつわ好き”のきっかけだったかもしれない。
何でもない日常のごはんがぱっと輝きを放ち、食卓に彩りを与え、みんなを一瞬で笑顔にする…なんて素敵なうつわの魔法。
韮崎のアメリカヤ2階にある「Alp Shop&Studio」はうつわに本、アウトドアに写真と、山好き写真家の店主が営む、日常をぽっと豊かにしてくれる小さなお店。
店内には様々な角度から店主がセレクトした、全国各地の作家ものの器がズラリと並ぶ。
ちょうどこの日は「おやつのうつわ展」を開催中で、春らしく爽やかなパステルカラーのうつわがたくさん!
これは素朴な焼菓子をのせたらかわいいな、とかこれには繊細な和菓子が合いそう…なんて、想像を膨らませる。
作家もののうつわは一つひとつに個性があり、それぞれの表情の違いやゆらぎを感じながら、作り手の手の温もりや想い、制作までの長い長いストーリーを受け取れるのが魅力。
ミシン ポタリー クリエイションのStiLL seriesは、額縁のようなレリーフがくっきり浮かび上がり、マットなニュアンスカラーもいい。
最近気になって手に取るうつわは、なぜかいつも白。
どんな料理にも寄り添い、どんな食卓やスタイルにも溶け込む万能選手でありながら、シンプルがゆえに実は最も個性があらわれる。
まわりを美しく引き立てつつも、自らもしっかりした個性を持ち、輝きを共鳴する白いうつわは、大人の女性として自分もこうでありたいと思わせてくれるのだ。
土や木、草、石など様々な素材が織りなすうつわは、私と同じ時を過ごし、ともに呼吸し、育ち、変化していく。
使い込んでいくうちに家族と一緒に日々の暮らしを見守り、家のにおいを纏う特別な我が家の一員になる。
これがうつわの魔法。
その先には、家族と紡ぐ平凡でありながらも、かけがえのない豊かな日常が無限に広がっている。
器ありきの料理を考えるのが趣味のママ編集者。ホームパーティにはテーブルコーディネートやお部屋のデコレーションまで張り切るが、最近は成長した子どもたちの反応が薄いと嘆いている。