Release:22.11.11
うつわと珈琲 ギャラリー青珠
~うつわが、ごちそう~
〇月×日
女性誌の編集部に配属され、初めて連載を担当したのが料理ページだった。
もともと料理好きだった私には、まさに願ったりかなったり!
予算の関係でスタイリングは自分で担当し、毎回料理研究家の料理に合わせてテーブルセッティングを考えた。
1日中セレクトショップや雑貨屋さんをまわり、撮影用の器を集めるうちに、我が家の食器棚もお気に入りの器で埋め尽くされていった。
そんな20代の頃から買い集めた器たちを眺めていると、思いもよらなかった好みの変化に何だか感慨深くなったりする。
居る次元がちょっとずつ変わっていってるような…。
和食器は、海外の洋食器に比べて形状のバリエーションが豊富で、その色合いもとっても繊細。それぞれに作り手の思いやエピソードなどがあり、その由来や違いを知ることで、毎日のうつわがごちそうに変わる。
北杜市高根町の山奥に、2022年5月ひっそりとオープンした「うつわと珈琲 ギャラリー青珠」。
この土地に一目惚れしたご夫婦が定年後に東京から移住し開いた小さなギャラリーカフェだ。
こぢんまりした店内には、京都を代表する伝統工芸品である「清水焼」の手描きに限ったこだわりのラインナップが並ぶ。
“清水焼”にはある特定の決まった様式や技法があるわけでなく、選りすぐりの職人が全国から集まり、その個性や技術が京都ならではの文化と融合して生まれたという。
「京都ではね、赤ちゃんが生まれるとすぐに、とってもいいお茶碗をプレゼントするのよ」。
そんなマダムとの会話が楽しくて、あっという間に時間が過ぎていく。
時代の流れとともに進化し、その形を変えていく焼き物。
私を魅了したのは40年前からのロングセラー、京焼を代表する荒木義隆氏の弟子、漢一氏の金彩の器。
深く鮮やかに「蒼」の世界へと引き込まれる、美しいトルコブルーに金箔が映える。
そして陶楽作の、表面にとても細かい三島の模様が入った五寸皿。
限られた面積の中に無数の細かい花の形の印を押して独特の文様を描く。
使いたい器から作るものを選ぶ。
それが私の“いいうつわ”の条件。
奥の小さなカフェスペースでコーヒー(500円)を一杯いただこう。
コーヒーに添えられた干菓子の豆皿も素敵。
何気ない毎日に楽しみを与えてくれる「うつわ」。
お気に入りの器で普段のおかずがごちそうになる。
お気に入りの器を眺めながら、「何のせようかな」と思いを巡らせ、
ワクワクしながらレシピを考える…。
そんな私にとっては
うつわが、ごちそう!
-北杜市
器ありきの料理を考えるのが趣味のママ編集者。ホームパーティにはテーブルコーディネートやお部屋のデコレーションまで張り切るが、最近は成長した子どもたちの反応が薄いと嘆いている。